図 書 室7
6千人の命のビザ                杉原幸子 著   
 
スティーブン・スピルバーグのアカデミー賞作品シンドラーのリストと言う映画をご存知の方は多いと思われる。シンドラー(確かオー

ストリア人かドイツ人)と言う実業家が第二次世界大戦時ナチスの迫害から約1000人のユダヤ人を救ったという話である。しかしこ

の本の主人公である杉原千畝はシンドラーと同じく第二次世界大戦中に6000人ものユダヤ人を救ったのである。その主人公の奥

さんが書いた作品である。この主人公が行った勇気ある行動や努力に関しては勿論感動を呼ぶものであるが、私がこの本で注目し

たのは主人公の所属先であった外務省の対応であった、彼は当時外務省から必要以上のビザの発行は控える様にとの指示を受

けていた、しかし彼は生死を賭けてビザ発行を求めてくる人々に対しビザを発行し続けた結果6000名もの人々を救う事となるが、

日本に帰国後外務省から追放されてしまったのである。後に彼はイスラエル国家から表彰される事になるが日本の外務省は最後ま

で命令違反との事で決して復職(名誉回復)を認めなかった。
 
本の内容から多少それるが、私は組織の有用性を認めた上で言うが、組織と名の付くものが嫌いである。組織に属している個々人

は決して悪い人で無くても、組織になった瞬間エゴ丸出しになり時には残虐行為も平気になるからである。たとえ組織設立の目的が

人(人民)の為と言いながら、いつの間にか組織を守る為に何でもやり始めるからである。例えば個人として気の進まない行為でも

組織(会社)命令で悪い事と知りつつも行ってしまう。(命令された事で罪悪感逃避できるからである)。勿論組織は目的遂行に於い

て大変有効な手段である事は万人が認める物であろう、しかしその背景となる社会成熟度(文明)が低い場合に問題となる。
 
日本はそういう意味で21世紀に入った現代に於いてもレベルが低いと言わざるえない。
 
ミラン・クンデラと言う人がこのような言葉を残している「文明の成熟度は、その社会で最も弱いものがどう扱われているかを見れば

わかる」 この言葉から見て日本は果たして社会成熟度が高いと言えるだろうか? ここでは社会全体のスケールで述べているがあ

なたが所属している組織で考えてもらいたい。  いつか組織論に付いても詳しく述べてみたい。 
 
 
魂との対話                        マイケル・J・ローズ 著 
 
ひょっとしたらマニア系の本かも知れません。
 
原題は「Talking with Nature」という作品で、著者が自然とチャネルしその深遠な教えを説いていく物語。マイケル・J・ローズの本

は現在進行中で読んでいる好きな作家の一人となっている。その中でもこの作品が、マイケル・J・ローズの本を読み続けるきっかけ

となったので紹介します。
 
今まで数々の本を紹介してきたが多くの点で共通している部分にお気づきだろうか?テーマは人間そのものの根源となる心身、そし

て自然である。そしてそれらは全てが繋がっている事。この本はその中でも自然からこの著者(読者)に語りかけ、その背後には見

た目以上の大きな意味が隠されている事を知ることが出来る本である。私は約14年間東京という巨大都市で過ごしてきたその閉鎖

された様な空間からか、いつも何か波動の違いと言うか分離されている様な気がしてならなかった、勿論未だその本当の解は出て

いないが、それは自然との繋がりの希薄さから来るもので無いだろうかと思う様になって来た。今も地方都市である札幌に住んでは

いるが東京と違い、自然と言われる部分は直ぐ手の届く所にある。選択の問題ではあるがこれは贅沢な事なのかもしれない。
 
今、我々の世界(人間界・自然界)は変革(本来の姿に戻る)のエネルギーに満ち、更に大きなエネルギーが否応無しに近づいて来

ている。その時我々はどの様な意識でどの様な生き方を選択しているのだろうか。
 
 
独創に憑かれた男たち                 前間孝則 著 
 
この本は結構古く10年以上前の作品である。取り上げた理由はNHKのプロジェクトXが放映される以前に当時最先端の技術開発

に挑戦した技術者のドキュメント作品で、例えばHDTV・知能ロボット・超伝導・FSX(当時、日米共同で最先端戦闘機の開発を行う

と言うもの)等の開発で政治的問題をも含んだ裏部舞台の説明などが面白い。この本が書かれた時点でそろそろアメリカの底力を

一般大衆が認知し始めた頃である。いずれにせよ政治も産業もしっかりとした将来ビジョンの無さが今の日本の姿であるが、ある意

味これで良かったのかもしれない。