図 書 室54
既知からの自由                                           J・クリシュナムルティ 著
 
この著者であるクルシュナムルティはこの図書室でも紹介したことが何度かある。彼が語る言葉は真理への探求そのもである。

本のタイトルである既知とは?さらにそれからの自由とはどの様なことなのか?

この問いかけにはとても重要な意味が含まれている。 

既知とは『すでに知っていると言う事』・・・・・・しかし私たちの知っているとの思いや記憶は本当に真実なのだろうか?

答えを先に説明すると私たちは真実を何も知らないし、知っていると思っている事は断片に過ぎず、さらにそれは条件づけによる自

分勝手に作り上げたマインドの投影以外の何物でもない、これが答えである・・・・・・。

ここからクルシュナムルティの鋭い洞察が始まる。 では本文から抜粋しよう。

『あなたは自分が条件づけられていることに気づいていますか?それがまず最初に自分に問うべきことなのです。 どうやってあな

たは自分が条件づけられていることを知りますか?何があなたに教えてくれるでしょう?

それは問題、挑戦に対するあなたの反応(リアクション)によってではありませんか? あなたはどんな挑戦にも自分の条件づけに

よって反応するのです。そしてあなたの条件づけは不適切なので、つねにあなたは不適切な反応をするのです。

もし自分の条件づけに満足している場合には、あなたは明らかにそれに対してなにもしないでしょう。

しかし、満足していなくてそれに気づくときには、あなたは何をするにも自分がその条件づけを引きずっていることを悟るでしょう。

本当にそうなのです!であればこそ、あなたはいつも死んだものと共に過去に生きているのです。』


私たちは日々そして常にこのように繰り返して生活している。。

そしてこの条件づけを基に私たちが知覚するのは、断片でしかも殆どが間違った認識と言う事である。 

ここからその気づきにおいて自分自身を変容させる事が可能なのだろうか、これが真の問題となる。

『そのような質問に対するあなたの反応はふどのようなものでしょう?あなたは言うかも知れません。「私は変わりたくない」そして

ほとんどの人はそうなのです。とりわけ社会的・経済的に安泰の人たち、ドグマ的な信念をもち、自分自身や事物の現状や、ほんの

わずか加工して満足している人たちの場合には。・・・ 中略 ・・・ あるいはあなたはこう言うかも知れません。「私は自分自身に根

本的な内的変化が必要だということはわかりますが、どうやったらそれができるのですか?どうかその方法を教えて、私が前進でき

るように助けてください」と。かりにあなたがそんなふうに言うとすれば、そのときあなたが関心を寄せているのは変化それ自体で

はありません。あなたは本当は根本的な改革には興味がないのです。あなたはたんに変化をもたらすメソッド、システムをさがして

いるだけなのです。 もしも私があなたにシステムを提供するほど十分愚かで、あなたがそれに従うほど十分愚かだったとすれば

あなたはただコピーしているだけ、模倣し、順応し、受け入れているだけあり。そうする時あなたは自分自身の中に別の権威を立

ち上げたことになるのです。』


誰もが陥る罠であり、錯覚に生きる人生の時間を更に浪費してしまう。

『人生のおける最も大きな躓(つまづき)の石の一つは、到達しよう、成し遂げよう、獲得しようとうい絶え間ない苦闘であるように

私は思われます。子供時代から私たちは獲得し、達成するようにトレーニングされます。他でもない脳細胞それ自身が物質的な安

全を獲得するためにこの達成パターンを作り出し、要求します。しかし心理的な安全は達成のその領域内には存在しません。

私たちは自分の関係、態度、活動の全てにおいて安全を要求しますが。すでに見てきたように、実際には安全そのようなものは存

在しないのです。自力でどんな関係にも安全はないことを発見すること。 心理的に永続するものは何もないことを悟ることは生

に対する全く異なったアプローチを生み出します。』


多くの人々は日々物質的であろうと心理的であろうと、常に悩み、苦しみ、得られるはずもない幸せを求め生きつづけている。

クルシュナムルティは私たちにこう言います。 本当にそれらから自由になりたいなら、まず自分自身を根底からすっかり変化しなけ

ればならいことを見よと。

それは、どの様な伝統にも頼ることは出来ない。

自分自身が変わるには、他を当てにすることは出来ない。どんな教師、どんな神、どんな信念、どんなシステム、どんな外的圧力

をも。 全ての権威を拒絶できるかそれがカギである。  それを投げ捨てて全く恐怖を含まない状態、すなわち失敗への恐怖、

行いが正しいか間違っているかについての恐怖が何もない、全ての虚偽を拒絶し重荷を投げ捨てる。

私たちは膨大なエネルギーを必要とします、しかしそれを恐怖によって浪費してしまっているのである。

そしてそれが出来たその時、何が起きるのか。

本来あなたに与えられている大きなエネルギーがあなたを満たします。

あらゆる恐怖を投げ捨てるとき。

エネルギーそれ自体が劇的な内部の革命を引き起こす。  それについてあなたは何もする必要がないと。

条件づけされパターン化した人生を、深い自己探求からその構造に気づき、苦しみや悲しみの根源であるエゴによる自己欺瞞を

暴(あば)き出す。 そしてそれを見る(仏教的に言えば正見)ことにより大いなる変化が起き、今に生き、あるがままに生きることが

出来るようになる。

クルシュナムルティのこの問いかけと導きは、偉大な賢者や覚者の教えと同じものである。