図 書 室21
マクロシフト                                      アービン・ラズロ 
 
 
ぶりの紹介である。この著者は『The Club Budapest』の初代会長を務めた哲学者・未来学者である。イエール大、プリンストン大

ューヨーク州立大教授を経て現在はベルリン国際平和大学の教授。ユニークなのは十代でニューヨークでピアニストデビューしてい

る。ちなみにブタペストクラブとは図書室17で紹介した『成長の限界・人類の選択』で知られるローマクラブの初代会長と同メンバーだ

った著者が作ったクラブで各国・各界の知性を集め科学・文化・経済・精神性を統合した新しい倫理を検討し、人類の未来に必要な視

点を提起する事を目的として設立されたもの。
 
前置き説明が長くなってしまったがここらへんで本文の紹介をしようと思う。
 
本の内容は先に説明している『成長の限界・人類の選択』に近いが更に大きな視点で説明している、マクロシフトとは『ひとつの社会が

発展するときに訪れる分岐の事で世界全体が結び付いている事を考えると人類文明全体の分岐点』要するに変異の時代=マクロシ

フトとなる。
 
このHPご覧の方は何を今更とおっしゃるかもしれないが、少々お付き合い願いたい。
 
今のアンバランスな人類社会システムを代表的なデータで少々紹介する。
 
1.全世界の億万長者のトップ500人の総純資産は1兆1千億ドル(その内訳で開発途上国の億万長者が1/3を占めている)で地球  
  の全人口の純資産の半分を占めている。豊かな方の二割の人々は、貧しい方の二割の人々の11倍のエネルギーを消費し、11  
  倍の肉を食し、持っている電話の数が49倍、自動車に到っては145倍になる。
 
2.北アメリカ・西欧・日本などの豊かな国は、暮らすのに必要なカロリーの1.4倍のエネルギーを消費し、マダガスカル、ガイアナ、ラ  
  オスなどの最貧国は必要カロリーの7割程度でアメリカ人が食料に費やす金は収入の一割程度であるが、それでも食料を買いす  
  ぎて15%はゴミ箱行きとなる。一方ハイチでは収入の半分が食料に消えるがそれでも栄養不足となっている。
 
3.アメリカ人が肥満を心配して一年間にダイエットに使う金は、国連の飢餓救済年間予算の30倍を越えている。
   
  などなどアンバランスなデータは次々に紹介されている。確か一時期こんな話が話題に上がった『もし世界が100人の村だったら』  
  皆さんも聞いたことあると思う。
 
この様な状況の集積が今の人類の現状を表している。
 
著者はこのマクロシフトの危機的なカオス段階を平和的でサステナブル(持続可能)な文明に導くにはやはり意識の転換しか方法は

ありえないと断言しており『ホロス意識』の目覚めが個々人から果ては人類全体に求められているとの結論に到っている。
 
*『ホロス意識』興味があれば自分でこの用語を調べて見て下さい。*
 
ここで追加であるが隣国の中国に関してのデータがある。
 
中国の人口はアメリカの約5倍だが耕地面積は何と1/10しか無いのである。言い換えると世界人口の1/5を世界の耕地の7%と世界

の真水の7%でまかなっていると言う計算となる、中国は今の所、世界の4割に相当する膨大な農業労働力を使って膨大な肥料と化

学薬品を土壌にばら撒き、何とかしのいでいるのが現状であるがその結果、土壌はひどく荒れ乾燥しつつある。
 
又、工業汚染が問題をさらに深刻にしており3/4が石炭と言う地方エネルギー供給事情で中国全土の40%近くで酸性雨が観測され

ている、又海岸部に集中している都市は車の急速な伸びが大気汚染を悪化させ、国際的に認められている基準をクリアしている都市

が1%にすぎない。更にとどめには工業排水の約85%と都市排水の90%は何の処理もされづに川や湖や海に垂れ流されている。
 
ここからは私の私見である。
 
このような恐るべきデータを知ると、今我々は中国経済に浮かれ我先にと企業進出しているがその結果に於ける責任をも認識するべ

きなのである。前にも説明したが一度地球規模で異常気象が数年続いたならこの巨大人口を抱えた国家がいつ暴走するか分からない。

 
しかし我々日本人も同じ道をたどって来たのであり今更急に中国に対し急速な工業化を止めさせる事は不可能であろうが中国の場

合地球規模で影響する。
 
と言うよりまともに影響を受けるのは間違い無く日本であろう。
 
せめて我々は現状を認識した上で行動する必要がある。