図 書 室37
お役所の掟                                                                                宮本 正於 著
 
 
国民年金基金の問題で日本中大騒ぎである。
 
なぜこの様な本を紹介するかは簡単に想像して頂けると思う。この本は結構古く15年以上も前に書かれた物で、日本経済がバブル

絶頂な時期でありこの著者は実際にその組織の中で働いており我々の視点からみれば当たり前な感じがする人物であるが、その組

織からは見るとアウトロー的な人物でなのである。
 
さて舞台は厚生省・・・・・・珍事件が続く。
 
最初にお役所の大切なお約束事として国会答弁と言う『適切な言葉』なるものが存在する。
 
・『前向きに』・・・遠い将来何とかなるかも知れないという、やや明るい希望を相手に持たせる言い方。
 
・『鋭意』・・・・・・明るい見通しは無いが、自分の努力だけは印象づけたいときに使う。
 
・『十分』・・・・・・時間をたっぷっり稼ぎたいとき。
 
・『努める』・・・・・結果的に責任を取らないこと。
 
・『配慮する』・・・机の上に積んでおく。
 
・『検討する』・・・検討するだけで実際にはなにもしないと。
 
・『見守る』・・・・・人にやらせて自分はなにもしないこと。
 
・『お聞きする』・・聞くだけでなにもしないこと。
 
・『慎重に』・・・・・ほぼどうしようも無いが、断りきれないときに使う、だが実際にはなにも行われないということ。
 
ここまで読んで頂いただければ解説も特に必要ないと思われる。 この本では厚生省の内部の面白事件が続くがここではもっと広く検

討したい。
 
さすがに現在は世間の目が気になってこの本に出てくるほどお役所もひどくは無いとは思うが、この様な脈々たる歴史が無責任な背

景として今の日本の役人と言われる人々の潜在意識に染み付いているのである。 
 
では何故この様な事になってしまうのかここから簡単に私見を要約してみたい。
 
まず考える必要があるのが組織化された世界でどこでも起こりうる事であり、お役所の様な場合は極端な例ではあるが無責任な行動

を取っている部分は必ずと言っていいほど、どの様な組織や個人にも存在するのである。ただ一般的で常識的と言われる会社の場合

その評価が市場原理で即はね返ってしまう為と、監督省庁などの小うるさいお上が存在するからまがりなりにも、お客様の為と社会通

念を守る為との名目でコンプライアンスが存在するのである。会社組織の場合は目的がはっきりしているだけに問題が扱いやすい、

利益があるか又は無いのかだけである。しかし公僕と言われる公務員はどうなのか?当然サービスを受ける立場の国民・住民からす

ると目的ははっきりしているが 行っている当の本人たちは、これでは目的がアバウトすぎて実感が無いし、監督するのは国会と言い

ながらも自由にコントロール出来るので結果省益重視なってしまう。結局は構造的に無責任な行動が無くならない様に出来ている。
 
解決するのはどうしたら良いのか?。これはとても根深い問題が潜んでおり何も日本の社会組織だけの問題では済まない事で地球

環境や人権問題まで話が進んでしまうのであるよって一部分だけを対象療法的に処置しても実は解決は出来ない。
 
ではどうするの?と言われると結論として私自身はこのままで良いと思っている極論と思れるのを承知の上で、結果何事も行き過ぎる

と必ず崩壊の道をたどるのであり一度クライシス又はクライシスぎりぎりを経験しないと人は学習出来ないからである。  何故なら言

って聞かせただけで直るほど人類が優秀だったらこんな事にはなっちゃいないでしょう。 思いやると言う想像力の弱い子供は痛い思

いをして初めていけない事をしたと気づく。前にも話したが地球には適切な配分さえすれば持続可能な状態で全ての人が豊かに生き

られる資源があるにも関わらずである。
 
結局は意識の問題を避けて通る事が出来ないのである、要するにいくら表面上の行動を改めようが意識が変わらないことには何度で

も同じ事を繰り返すからである。
 
そしてここでも最後は個人の意識に答えが落ち着くのである。 自己にとって本当に大切で利益となる事とは何なのか?その大切さを

生きるのには人との関係、つまり本当の自分の幸せと豊かさとは他の人々の幸せと豊かさがあってこそ成り立つとの考えに気づいた

時に最終解決策を手に出来るかもしれない。