図 書 室17
成長の限界・人類の選択               ドネラ・H・メドウス、デニス・L・メドウス、ヨルゲン・ランダース 共著
 
この本の原題は『Limits to Growth』でサブタイトルが The 30-Year Updateである。これは新刊本で、約30年前の書かれた『成

長の限界』を最新のデータを基に再構成し地球環境の現状と崩壊の予兆、そして再生の可能性を思索したものである。
 
何故私が新刊であるこの本を取り上げたのかは是非HPをご覧の方にも読んでもらいたいとの思いからである。
 
我々は今現在の地球環境に対し近年の異常気象等からも明らかな様に、何かが変だと漠然とであるが感じているはずである。更に

この様な状況になった事も漠然とであるが理解しているはずである。そんな中でこの本は具体的に近年人類が行って来た営みの結

果として自然環境に及ぼした影響を分かりやすく説明してくれている。環境保護を謳った本の多くはその環境破壊の原因となった産

業・社会・政治の批判部分の強調だけで終わる事が多いが、この本は問題の根本原因を見据えた上でただ単に産業や社会を批判

するのでは無く、複雑に絡み合った人類社会と自然の関わりあいのメカニズムを科学的に理解し、更に自然の再生許容の限界値を

全ての人が理解すること、そのために正確な情報とデータの分析が重要であると言っている。(ここではエコロジカル・フットプリント(

*注)という指針で計算している)地球環境が悪化している主な原因は地球人口の大部分が相変わらず貧しい事、少数の人たちが

過剰に消費している事の2つに尽きる。そしてその現状を続ける事は持続可能ではなく、行動を遅らせるとういう選択肢はもはや存

在しないと言っている。今この時点で可能な事として世界の人々全てに十分な資源配分を行い豊かな食料を供給してもバランスのと

れた社会システムであるなら自然は持続的な再生産システムとして維持出来うるものである。しかし現状のまま先進国と言われる国の

無駄の多い偏った大量消費と開発途上国の人口増加がもたらす結果として自然破壊をこのまま続けて行くと崩壊は免れない。最悪

のシナリオは今の自然が汚染物質の吸収臨界量に達した時、突然崩壊のスパイラルにはいり甚大な災害となって人類を襲う事にな

る可能性が高いと述べている。 
 
私もこの事は同感であり近視的な富の集中とそれに伴う資源の乱用を続ける結果、地球に明るい未来は無いと断言できる。
 
恐らくこのHPのお読みの方の考えは自分の生きている間さえ何とかなれば良い(せめて自分の子供の時代ぐらいまで)と思っている

のでは無いだろうか?
 
しかし前文で述べているが自然が汚染物質を吸収無害化の臨界量に達しようとしている今、突如として破壊的猛威を振るう可能性が

ない訳では無くこれ以上環境破壊の先延ばしはもうできない。富める国が目先の欲の追求に終始し、貧しい国の人口過剰増加によ

る自然破壊を更に加速させ、しいては自分又はその子孫にそのつけが跳ね返って来る事にそろそろ気がついても良さそうなものだ

が・・・・ひょっとしたら気が付いていてもブレーキが利かないのかもしれない。又先に述べた様に自分の生きている間との気持ちから

ブレーキを利かせる意思が無いかもしれない。

その結末は富める者も貧しい者も平等に被害を受ける(いや貧しい者の方が甚大であろう)。しかし富の再分配(決して全てを出せと

言うのでは無く、ある科学者の算出ではせいぜい10%前後(それだけ偏りが大きいと言う事))によって自然破壊だけにとどまらず平

和な世界の実現も出来、持続的自然環境保全が可能となる。今の我々がまず気が付かなければならないのは現状の生活水準を落

とさずともそれが実現可能であると言う事を認識することが大事である。 ようするに今の地球資源をバランス良く配分すれば全ての

人が飢える必要も無く、資源の奪い合う必要も無く持続的に自然環境の維持も出来る。  『しかし現実の貴方と私の頭の中は金・金

・物・物・地位・地位・男・男・女・女・Etc・Etcさしずめサラリーマンは売上・売上・売上・・・てか自然破壊だ?そなもの少しは気にかか
 

るけど自分の日常生活の心配だけで目一杯だな。』こんな所でしょうか?
 
いささか説教じみてしまった感がありますが・・・。
 
いずれにせよ人類が猿以下の存在か又は智恵ある種かどうかの結果はそう遠くない将来にはっきりしそうである。そういう貴方も私

もその一員であることを忘れずに・・・。
 
*注:エコロジカル・フットプリント・・・汚染の排出を吸収するのにどれほどの面積の土地が必要なのかを計算した指数